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一つ目になった泥田坊
- magazine-yokai
- 2017年7月17日
- 読了時間: 2分

田畑を破壊する、近代の無為な開発に警鐘を鳴らす象徴的妖怪として描かれがちな泥田坊。
その抱えるテーマは、実はそんなにダイナミックなものではなく、もっと根深く、まさに土臭い家の床下から生まれたような妖怪。
泥田坊は、生前真面目な愛情深いおじいちゃんだった。
彼が息子のために用意し、遺した田んぼ。それを継いだ息子が怠惰な暮らしに明け暮れ、台無しにした。
おじいちゃんは妖怪となり「田を返せ」と言って祟ってきたという姿であるという。
泥田坊は、
•「田を返せ」と常に叫んでいる
•いつでも田んぼのそばにいる
•一つ目
ということだ。
なんて悲しい存在なんだろうか。。
譲ったものを思い通りに使ってもらえない悲しさに、耐えられない。
返せ!と、田んぼとあの苦しい日々を、取り戻せない時間を悔いて叫んでいる。
思いが強すぎて、死後もそこから離れられない。
とうとうその執着心から、目が一つになってしまう。
そして今もなお、その狭い視野で世界を見続けているのだ。
どんなに深い愛情で、誰よりも子供のことを思って生活していても、
子供は一人でに広い世界に目を向ける。
そのことを知りながら、それでもどうにか報われる日を乞うて、その一つになった目を子供に向け続ける。。
泥田坊が本当にいたのか、どんな理由で妖怪となったかは、もはや知ることはできないが、
彼を見るたびに、自然破壊への警鐘というより、そんな悲しい親子の姿が、今も昔もあったのではないかなと、私は思うのです。
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