

悲しきモンスター 経凛々(きょうりんりん)
言葉に魂が宿る「言霊」と同じように、 ありがたいお経にも魂が宿る。 はたまたそれを記した経文自体も命を宿すことがあるのだろうか。 経文の妖怪、「経凛々(きょうりんりん)」 「尊ふとき経文のかゝるありさまは、 呪詛諸毒薬のかえつてその人に帰せし...


子の重さ 産女(うぶめ)
母親となる女性は、十月十日、我が子を無事に生み、その腕に抱くためにその日々を過ごす。 この世界のいたるところで起きていることだというのに、その凄まじさは、一人一人の体験を聞くと想像を超えるような大変な日々を過ごされている。...


ふっ 火消婆(ひけしばば)
夜に白熱灯の明かりは心地よい。 先祖は長らく夜を昔ろうそくで過ごしたのだから、きっとその名残だろうか。 そんな私たちに丁度いい明かりも、闇夜に隠れ人外に暮らす妖怪たちにとっては、眩しすぎるものでもあるのだろう。 宴会の会場、提灯など、誰もいないのに灯していたろうそくが突然消...


乳飲み子の面影 雨女
秋の長雨か。 一気に冬が到来したような、冷たい雨が降る。 妖怪「雨女」 産んだばかりの子供を、雨の日に神隠しに遭い失った母親が子供を探し続け、妖怪となった姿だ。 長野県では、雨の降る夜に「雨おんば」と呼ばれる妖怪が現れ、子供をさらいに来る、大きな袋を担いで現れる、と言う伝承...


悪い”何か” 青坊主
その正体は地域や伝承によって諸説分かれる。 人影であり、坊主の姿でもあり、そして何がしかの不吉を呼ぶものである。 「青坊主」 ・春の日暮れどきに子供をさらう。 ・女性の前に現れて、「首を吊らないか」と誘いかけ、断らなければ襲い掛かり、気絶した女性を無理やり首吊りさせる。...


不完全変態 百々爺(ももんじい)
「原野夜ふけてゆきゝたえ きりとぢ風すごきとき 老夫と化して出て遊ぶ 行旅の人これに遭へばかならず病むといへり」 原野に現れる老人の妖怪「百々爺(ももんじい)」。 出会ってしまうと、必ず病気になってしまう。 百々爺(ももんじい)は、「モモンガ」や「野衾」という妖怪の異称でも...


学び忘れ繰り返す 禍(か、わざわい)
君子危うきに近寄らず。 教養があるものは自ら危険な物事には近づかない、という言葉だ。 しかしその学びの礎となるには、過去の失敗を知らなければいけない。 どんな学びも一番初めに、大きな失敗を経験した人がいる。 その昔、争いも災厄もない平和で豊かな国の王がいた。...


雨に踊れば 雨降小僧(あめふりこぞう)
冷たい雨とともに一気に寒気が訪れ、冬の支度が急がれる。 夏の余韻は既になくなり、あっという間に秋模様と言った最近ですが。 「雨のかみを雨師(うし)といふ 雨ふり小僧といへるものは めしつかはるる侍童(じどう)にや」 雨の神様に仕える子供の妖怪、「雨降小僧」(あめふりこぞう)...


魔の訪問 通り悪魔(とおりあくま)
「暇」は人を食らう。 忙しく体を動かしている時間から解放されてやっと余裕ができた途端、気が抜けてしまい、頭が思ったように働かなくなったり、 それまでさして気にも留めなかった細かいことが気になったり、イライラしたりする。 ぽっかりと日々の隙間に入り込んだ「暇」によって、張り詰...


誰がために鐘は鳴る 野寺坊(のでらぼう)
全国に7万件以上もあるお寺。 お寺と一口といっても、大きいものから小さいものまで、 それこそ数多くのお坊さんが暮らすお寺もあれば、小さくて管理もなかなか行き届かないようなお寺もあるだろう。 お寺が廃れる理由はいくつかあったとて、きっと”身から出た錆”という言葉通り、お坊さん...