そこにいる おとろし
- magazine-yokai
- 2017年7月19日
- 読了時間: 2分

この、絵を見ただけでゾッとする姿が、底しれぬ印象を与えるおとろし。
神社の鳥居の上にいて、境内で悪さをする輩がいると、上から落ちてくるのだそうだ。
(こんないでたちの妖怪に目の前で睨まれたら、いたずら小僧もあまりの怖さに逃げることも忘れそうだ。。)
彼(でいいのか)の体は黒髪で覆われている。
目は般若の面を思わせ、ぎっと目をつり上げ、恐ろしい形相でこちらを見ている。
半分開かれた口には大きな牙がある。
黒髪で覆われた全身で、頭からは妙に長い前髪が顔にかかり、まるで暗がりからこちらをじっとのぞいているような、嫌な印象を受ける。
そんな見た目でありながら、落ちた後それ以上何をするとか、厳し目のバチを与えるとか、そういったものではないようだ。
ブワッと落ちてくるだけ。。いや十分恐怖ではあるが。
一体彼はなぜ生まれたのだろうと考える。
彼の名前は、
「恐ろしい」「おどろおどろしい」「気味が悪い」の意味だといわれている。
これはちょっと不思議な名付け方だと思う。
一つ目小僧、ろくろ首、とかにいうビジュアル的な名前ではなく。
「おとろしを実際に見た者が思うであろう言葉」がそのまま名前になっている。
まるで、怖さそのもの、という名前。
つまり彼は、私たちの感じる思いが反映された妖怪、
私たちが感じる畏怖の念そのものが姿を成して生まれた妖怪なのかもしれない。
そこが神社であることも…
現代より信仰が密であった昔の人々が抱いた、神様を恐れ敬う気持ちが現れたのではないか。
神社は、境内に漂う神聖な空気、それでいて人外のものと接触する場という、我々の事情が通じぬ恐ろしい場所。
小さい頃、神社で友達と遊んでばいばいした後、一人で神社に残ると妙に不安で怖かったものだ。
私たちが神社に入ったその入り口から、おとろしはじっと見ていたのだ。
私はきっと、遊びたかったので知らないふりをしていたのだろう。
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