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人か山の神か 天狗

全身真っ赤で、大きく、鼻が高い。

下駄を履いて空を飛び回り、悪巧みをして人を困らせる。

高い鼻は、慢心の象徴でもあるらしい。

山の大きな岩、中腹に開けた広場、そう入ったところは天狗の寝床であったり、足掛け場であったり、相撲をとった場所、と言われる。

「天狗星」と言われる流れ星は凶星と言われて、災厄の前兆であると言われている。

字も書けるほど賢いらしい。

細かい能力を列挙して、各伝説をまとめて行くと一冊の本でも足りないだろう。

もはや妖怪、と一口にくくるには、畏れ多い気さえして来る。

一部の信仰では、彼は「山の神」でもあるのだ。

その昔、山伏と言われる人たちがいた。

山にこもり、厳しい修行を経て、霊力を得ようとする修験僧のことだ。

天狗は、この山伏の服を着ている。

このことからも、山伏と天狗は同一と見られることが多くあるようだ。

厳しい修行に耐える山伏の姿を山中で見た人が、その形相にこれぞ天狗と思ったのか、

それとも修行が完成した山伏の姿は、もしかすると本当に羽が生えて全身が赤く盛り上がり、体も大きくなっていたのかもしれない。

いずれ山という「異界」に住み、神に近い力を得た人智を超えた存在のことを天狗と言うのであれば、

山伏も、天狗と同じほど凄まじいものであったのだろう。

山は、昔も今も、非常に恐ろしい場所だ。

一度迷ったら前後左右の方向がわからない。

ぐるぐると同じ道をさまよっているような感覚。

突然岩が落ちて来ることもあるだろう。

急激な気温の変化、誰もいないはずの林の奥から何か物音がする、突然揺れる木々たち。。

山小屋を揺らしたり、突然笑い声が響いたりする。

山の中で怖い思いをした時は、天狗がそれを頂上の岩場からみて笑っているかもしれない。

その意地悪さは、どこか人間的でもあると、私は思うのだが。

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