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誰ぞ彼のものは 逢魔時(おうまがとき)


妖怪の話ではないのだが。

昼と夜が移り変わる、ちょうど陽が沈むが、夜ほど暗くもなっていない、黄昏時。

時の狭間とも言えるこの妙な時間を、「逢魔時(おうまがとき)」と言う。

この時間は読んで字のごとく、「魔に逢う時」だ。

人外のものと出会う確率が高い時間。昼間に寝静まっていた奇妙なものたちが動きだす時間なのだ。

野外フェスで言うと(言わなくても良いのだけど)、

そのフェスの盛り上がり最高潮の時間が真夜中丑三つ時であれば、

続々と人が集まりだす、開場直後のざわめきが「逢魔時」だと、私は思っている。

大気全体の落ち着きがなく、

何かが起こりそうな気配がする時間。

昼間の時間が長い夏の時期だと、それを体感することが多い。

夜なのにまだ明るい道を歩いていると、昔から妙な感覚になるものだ。

小さい頃、今ふとあの細い裏路地に入ったら、別の世界に行ってしまうのではないだろうか、と言う感覚を覚えることもあった。

実際、ある道に入った途端にセミの鳴き声が一切しなくなったり、人の気配がなくなっていたりすると、

静寂に混じってざわざわと何かがまとわりつき、自分の周りに見えないものが集まっているような気がするものだ。

私は妖怪やそういった幽霊の類を感じる才能も何もないのだが、

逢魔時という言葉を知る前から、逢魔時の存在を肌で知っていた。

そう、ちょうど学校の「下校時間」だ。

放課後の体育館、廊下、校庭、校舎の裏側、教室は子供ながらに、

奇妙で、怖くて、そして少し魅力的だった。

黄昏時は、”誰ぞ彼”時と読む。

そこにいる人が「誰かわからない」時間であるという。

あの日、放課後の教室に残っていた同級生は、果たして本当の彼らだったんだろうか。

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