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素直になろう 人面瘡と二口女


ある日ふと、体の一部にできものができる。

日毎に段々と強い痛みと痒みを伴って、大きく腫れ上がる。

大きく腫れたそのできものは、まるで人の顔のようで、そのうちヒクヒクと一人でに動くようになり、

口らしきものも開いてくる。

食べ物を口元に持っていくと、それを飲み込んだ。

それも次第に大量に求めるようになり、食べ物をあげないとひどく痛むようになる…。

これを人面瘡という。

人面瘡を患った人間は、段々と憔悴し痩せていってしまう。

人外のものが体に憑くということに肉体も悲鳴をあげるのだろうし、際限なく食べ物を用意せねばならないので、

本人は体が休まることはままならなかったろう。

また、人面瘡は人語を話すという。

その逸話は色々とあるようだが、

大別すると話す内容は本人の意思とは全く関係ない(いわゆる預言的な)ものか、

もしくは本人のみ知り得るような心根を話すこともある。

二口女、という妖怪がいる。

後妻として入った女房が、前妻の娘を可愛がらず餓死させてしまう。

娘の四十九日後、主人はうっかり斧で女房の後頭部に怪我をさせる。

すると、その傷口が人間の唇のようになり、次第に歯や舌らしきものもできてくる。

傷口は痛み、口は食べ物を欲しがるようになる。食べ物を与えるとやはり痛みが引いたという。

ある日、その口から何か声がするので聞いてみると、「前妻の子を殺してしまった」という後悔と反省の言葉だったという。

素直に自分の罪を認めることは、気丈なふりをした悪女には難しかったのだろう。

だが、決して許される事ではないとしても、

彼女も彼女なりに、命を奪ったことを日々後悔していたのだろうか。

人の心は、実に多面性があるものだ。

とはいえ、初めから素直に胸中を吐露すれば、彼女も苦しまずに済んだのかもしれないが。

頭にできた人面瘡は、彼女に与えられたバチでもあり、

せめてもの救いとしてあえて神様が与えてくれた、最後の贖罪チャンスだったのかもしれない。

(「主人が斧でうっかり女房の頭を傷つける」という経緯が、ちょっと奇抜な感じもありますが…。ちょっと荒技が、神様…。)

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