働くお母さん 濡れ女
- magazine-yokai
- 2017年8月9日
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海や川に現れるという、半蛇半人の女の妖怪、濡れ女。
人間の姿で現れることもあるが、顔以外は蛇の体である。
蛇の体の長さは300メートルを超える大蛇で、彼女に見つかった者は、逃げ切ることはできないという。。
濡れ女は、見た目も恐ろしい妖怪であるが、加えて「牛鬼」の使いとして現れると言われる。
人の姿で人間に声をかけて、抱いている赤子を人に渡す。と、その人が抱いているうちに濡れ女は海に入っていってしまう、そして入れ替わりで、あの恐ろしい牛鬼が現れる。
頼まれた人間は、赤子を投げ捨てて逃げようとするが、赤子が重い石になって離れず、牛鬼に喰い殺されてしまうそうだ。
石のように重い子供を抱かせる妖怪に「産女(うぶめ)」がいるが、
濡れ女も産女の仲間であるならば、産女はその実、身ごもった女性が出産を果たせぬまま亡くなった果ての姿であるから、濡れ女が抱いている子供も、彼女が生前身ごもっていた赤ん坊なのだろうか…。
そして牛鬼と行動を共にすることで、自分と子供の命を繋げているのかもしれない。
思えば妖怪の世界のいわゆる「エネルギー源」が何かは、よく分からない。
人を襲い喰らうものもいれば、ただそこにいて現れる、という自然現象そのもののような妖怪もいる。
牛鬼や濡れ女は、「人を襲わなければいけない」妖怪だ。
人を食べることなのか、人を襲うこと、が何かの力となるのかは分からないので置いておくとして、
濡れ女一人では、人を襲うにも難しかったのかもしれない。
そこで、子を養うためにも、牛鬼と協力し合うとしたのか。。
以前は他の産女のように人間の姿だった彼女は、水辺に棲む牛鬼の行動範囲に適合できるよう、大蛇と混じり合い自分の体としたのかもしれない。
突飛な想像かもしれないが、母親の愛というのは、人であれ妖怪であれ、一般的に考える理をひとっ飛びで超えてくるような。きっと凄まじいパワーを持つものであるのだろう。
妖怪でありながら、生きる術として、異なる存在に自分を昇華させた…
愛情深い濡れ女の執念は、今日も牛鬼と共に水の底でじっと息を潜ませているかもしれないのだ。
傍に愛しい我が子を抱いて。
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