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深淵からの来訪者 塗仏(ぬりぼとけ)
- magazine-yokai
- 2017年8月10日
- 読了時間: 2分

真っ黒な、坊主の妖怪。
両目玉が飛び出していて、さらにその目玉は下に垂れ下がって、まぶたの裏側も丸見えである。
奇妙で得体の知れない妖怪「塗仏(ぬりぼとけ)」。
彼は仏壇から突然に現れて、ぐわっと目を飛び出させて人を脅かす、そして怠け者の僧に襲いかかるという。
実家にお住いの方なら、おうちに仏壇がある方も多いだろう。
仏壇は、あまり明るい場所には置かず、ちょっと奥まったところに置いてあることが多いはずだ。そして立派な仏壇ほど紫檀、黒檀など、重厚な色になるだろう。
あまりギラギラ飾り付けるものでもないし照明もない。
薄暗い部屋でその仏壇の扉を開けたときに、扉の中が、とっても暗いのは想像できるだろうか。。
あの真っ暗な仏壇から、わっと塗仏が現れるのだ。
それは、泣いちゃう。。
いくら心頭滅却しているお坊さんでも、それは怖かったろう。
お察しします。。
仏の姿をした闇の者が襲ってくる、という塗仏の誕生には、心理的なものもあったのだろうかと思う。
お坊さんは、一生修行を続ける方たちだ。
いくら場数を踏んでも、素人目には分からなくとも、本人として「至らない」と感じる難しい時期があるのかも知れない。そんな時、まっすぐに仏壇に向かうという気持ちは、どんなに取り繕っても「見透かされている」という怖さがあったことだろう。
己の焦燥感を、闇の奥から見られている。
いや、闇と感じているのは自分自身か、仏はそれすらも見通しているのか。
途方もなく奥深い、生命の深淵が自分のことを見つめている…。
「怠け者の僧を襲う」という塗仏は、
こうしたお坊さんの畏れと修行に向かう心から生まれた妖怪なのかも知れない。