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驕りと勘違い 襟立衣(えりたてごろも)
- magazine-yokai
- 2017年8月14日
- 読了時間: 2分

「鞍馬山僧正坊」と呼ばれる天狗がいる。
牛若丸に剣技を教えたとされる、日本八大天狗の1人である。
彼はかつて人間の高僧だった。
しかし修行途中にもかかわらず、悟りを得たと思い違えたため、死後に成仏することができなかった。そして彼はその早合点から、驕りの象徴である天狗に生まれ変わることとなってしまう。
鞍馬山僧正坊は、天狗となってからも高僧の衣服を身に纏い続ける。
いつしかその僧衣が妖怪化し、衣に目や髭が生え、尖った襟が鼻になる。。
妖怪”襟立衣”はこうして生まれてきた。
なぜ僧衣が妖怪化したのか?
その己の驕りの精神に対して、なんらかの罰が与えられたのか、何か別の魂が憑依したのか。
それとも罰でもなんでもなく、鞍馬山僧正坊の思いが、まるで付喪神を生み出すように、僧衣に魂を与えたのだろうか。
高僧の出で、妖怪となっても「山の神」の異名をとる天狗になり、この通り強い力を得ても、
彼の心中は、もし生前に悟れていたら…と思い続けていたのだろう。
後悔先に立たずではあるが、あと一歩というところで逃したものが大きすぎて、悔やんでも悔やみきれなかったろう。
それにしても、
悟りを得るに至らずとも、高僧にまでなった鞍馬山僧正坊なのに。
いっときの驕りと勘違いで妖怪にさせてしまうほど、神様には罪深く見えてしまうのだろうか…。
修行の道は、想像以上に厳しいようだ。。