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走り続ける無念 輪入道


牛車の車輪の中央に、男の首がついている。

車輪はぼうぼうと燃え、街道を「おのれ…おのれ…」と言いながら走り回る。

この姿を見てしまったものは魂を抜かれてしまうという。

その妖怪の名前は「輪入道」。

輪入道は、夕暮れ時、街から山へすごい勢いで駆け上っていくそうだ。

あまりの恐ろしさに輪入道を自ら見ようとするものはいなかったが、ある日、ある女が好奇心にかられ物陰から輪入道を見ていた。

すると輪入道は人の足をぶら下げて女に「おれを見るより自分の子どもを見ろ。」といったという。

その足は、輪入道に引き裂かれた我が子の足だった。。

なんとも残酷で恐ろしい話である。

輪入道は、もともと牛車の持ち主が死に、妖怪になったといわれている。

「入道」とは坊主頭の人、仏門に入った人をそう呼んだので、

元は牛車に乗るほどの高僧であろうか。

一体どんな恨みを残して世を去り、地獄の業火を燃やし続け、この世をさまよっているというのか。

朧車の回でも触れたが、牛車は当時”交通手段”というだけではなく、使用者の権威を示されることが多かった。

輪入道もまた、自らのプライドを何者かに無下にされ、無念のうちに亡くなっていったのだろうか。

朧車といい、輪入道といい、牛車に現れたり姿を変える妖怪は、

非常にやりきれない怒りと憎しみとを抱えていて、なんとも恨めしそうで悲しい。

現代では身分制度が亡くなったとはいえ、

近年では勝ち組・負け組・セレブ族・リア充…人はいつの世でも格付けをしたがるもののようだ。

1000年後の未来に、高級外車仕様の輪入道が現れないことを、願うばかりだ。。

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