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浮き草の女心 女郎蜘蛛(じょろうぐも)


夏から秋にかけて庭先に巣をはり、大きくて細長い脚を持つ、黄色と黒の縞模様がくっきりと美しい体を持つ女郎蜘蛛。

雨上がりの露を浴びた巣の網目は、その繊細な編み込みが光に反射してキラキラと輝いている。。

そんな実在の蜘蛛の名前をそのまま背負った妖怪、「女郎蜘蛛」(当て字で”絡新婦”とも書くそうだ)。

女郎蜘蛛は滝に住み、男を引きずり込むと言われる。

ある男が滝壺のそばで休んでいると、無数の糸が脚に絡みついてきたので、

その糸を近くの切り株に結び付けてみると、切り株がメリメリと滝に引き込まれていったという。

また、ある夏に男が家の縁側でうたた寝をしていると、50代ほどの女性が現れる。

彼女は「自分の娘があなたに想いを寄せている」と言い、その男を自分の家へと招く。

家には娘がおり、その男と結婚したいと告げる。

男は妻子がいるため断るが、娘は「一昨日母はあなたに殺されかけたのにあなたの元を訪れてくれた、その想いを無にするのか」と、すがりつく。

男が困っているうちに、気づくと家は消えて、元の縁側にいた。

夢かと思いあたりを見ると、小さな女郎蜘蛛がいて、軒にも巣がびっしりと張られていた。

男は、はっと一昨日に一匹の蜘蛛を追い払っていたことを思い出したのだった。

その糸で男を捕らえ、我が物にしようとしたり、殺されかけてもその男を我が娘のためにと奔走したり。

いつでも男を求め続ける彼女たち。

その執念は細い糸でじわじわと相手を絡め取ろうとするように、女性という性質の怖さを感じさせる。

巣を生み出しては壊され、移動してはまた巣を張る蜘蛛の生き様は、浮き草のように不安定だ。

いつかどこか安心して過ごせる家を持ち、伴侶とともに過ごしたいのだろうか。

その心は、今もずっと寂しくあるのだろうか。

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