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骨の髄まで 手の目
- magazine-yokai
- 2017年8月22日
- 読了時間: 2分

野原を歩いていると、目の前に一人の盲人が現れる。
見ると盲人の手のひらには目があり、その目でギョロギョロと何かを探しているようである。慌てて逃げ帰り聞くことには、そのあたりで数日前に野党に襲われ座頭が犠牲になった、という。。
”座頭”とは、江戸時代の盲人の階級の一つで、坊主頭で、琵琶や三味線を弾いて、鍼灸・按摩などで生計を立てていた。(この制度は目が見えない彼らへの政府の保護政策だったが、これが江戸時代の音楽や東洋医学の発展に貢献する形にもなったそうだ。)
江戸中期になると、官位を得るための高利の金貸しが公認されたこともあり、悪どい方法で暴利を得るものもあったようだ。
悪どさはその人によりけり、ではあるだろうが、
いずれ座頭は本業で元手を稼ぎ、それを元手に金貸しをし、その金は官位を得るための資金として残し、暮らしていた存在だ。
彼らが持っていた金で、遊べるお金はわずかなものであったろう。
哀れにも野党の一軍に出逢ったある座頭が、そのわずかばかりの金品を奪われたうえに、なぶり殺しにされてしまう。
彼は死してなお月夜になると姿を現し、復讐すべき相手を捜してさまよった。
しばらくは目が見えず手探りで探していたが、その執念から手に目が開いて、「手の目」となったのだ。
初めて得た視界で、初めて見る世界で、顔も知らない敵を探し続ける。
果たしてその敵には出逢えたのだろうか。
いや、復讐を果たしたとて、襲われ殺されたその時に、目の見えない暗闇から感じた野党共の身勝手な残酷さは、どれだけの恐怖だったか。
この世界全てを憎しみの対象に染めてしまったかもしれない。
「手の目」に出会うと体から骨を抜き取られて骨をしゃぶられ、最後は皮だけの姿になってしまうという。
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