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幻が生む幻 蜃(しん)


蜃気楼

 ー熱気・冷気による光の異常な屈折のため、空中や地平線近くに遠方の風物などが見える現象。

いいや、妖怪の世界では違うのです。

蜃気楼を生み出し ていたものは、大きなハマグリだったのだ。

大ハマグリが、春や夏に海中から”気”を吐いて楼閣(高く立派な建物)を作り出す。

その名を、蜃(しん)という。霊獣の一種とも言われている。

”蜃とは大蛤なり 海上に気をふきて 楼閣城市のかたちをなす これを蜃気楼と名づく”

蜃気楼の名はその通り、「蜃」が「気」を吐いて「楼」を見せると言われていたことからきている。

その昔、特に海上では、蜃気楼は時に命取りにもなる奇怪な現象でもあった。

海の中に魔物が住んでいて、人間に幻を見せ惑わすものと考えていたのだ。

大きなハマグリは、美しい乳白色の模様と重厚な貝殻に覆われ、なにか見目麗しいものが隠されているような、そんな幻想的な魅力があるのは、現代の人でもなんとなく感じられる部分ではないだろうか。

蜃にはもう一つ、”竜”であるという説が存在する。

これでいう蜃の姿はヘビに似たもので、角と赤いひげをもち、下半身は逆鱗であるとされている。

この蜃の脂を混ぜて作ったロウソクを灯すと、幻の楼閣が現れるという。

ハマグリの「蜃」が竜族の「蜃」と同じ名前であることから混同された、という伝承があるようだ。

竜という幻の生き物がさらに蜃気楼を生み出すか、

ハマグリという実在の生き物が謎の力で蜃気楼を生み出すか、どちらであなたは信じたいだろうか。

もしかするとどちらも正解で、ハマグリの中に竜が封じ込められているものかもしれない。

今も海のどこかで、きっと綺麗な楼閣を吹き出しているのだろうか。

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