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机上の鬼 文車妖妃(ふぐるまようひ)


夜な夜な積もるあなたへの想い文、

その熱は燃え上がりこの身を焦がし、いつしか私は、あなたの元へ黒煙となり届くだろう。。

文車とは、貴族の邸宅にあった荷物を載せる屋根付きの車のようなもので、火事などの非常事態に備えて家に置いていた、

つまりはちょっと立派な手押車である。

大きさは、小さめのラーメン屋台くらいの大きさ…というとわかりやすいだろうか。

その文車に積まれた古い恋文や書籍などにこもった怨念や執着、情念などが変化した妖怪が「文車妖妃」だ。

古い書物から生まれる、というところは少し九十九神の成り立ちと似ているだろうか。

しかし、唐傘小僧のように可愛げのある九十九神ではない、その姿は怨念が入り混じり、見るも恐ろしい鬼の姿である。

”酒呑童子”という鬼の頭領がいる。

彼がまだ人間であった頃は絶世の美少年であり、多くの女性に恋文をもらった。しかし、彼は読みもせず全て焼いてしまったという。

すると、怨念となったその煙は彼の周りを取り囲み、彼を鬼にしてしまった。

恋文に書かれた想いに悪意はなかったであろうが、叶わぬ想いがさらに踏みにじられた時、

純粋な想いはあっという間にどす黒い煙と変わり、人間を襲う。

想いを伝えるだけで良い、なんて綺麗なことはない。

遂げられたくて、遂げられたくてたまらないのだ。

その燃えるような想いが、いや、行き過ぎれば浅ましさとも言えるだろうか、いつしか人ならざるものへの扉を自ら開けてしまうのだろう。

ラブレターや、日記などもその類だが、

夜分に書く文章というのは、明るくなってから読むと恥ずかしくなるくらい感情的で、ドラマチックで、

これが本当に自分の文章だろうかと衝撃を受ける。そんな経験をした方は少なくないだろう。

客観的に見て初めて気づくほど、それほど、人は”想いを込めている”時の自分の姿を管理できていない。

気をつけよう。

歯の浮くような甘い言葉に酔いしれて、ニヤニヤ笑った口元に、早くも牙が生えてこないように。

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