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罪と罰 油赤子
- magazine-yokai
- 2017年9月3日
- 読了時間: 2分

今でこそスーパーにもずらっと多種多様に並び、時には安値で買うこともできる油だが、昔は大変貴重なものであった。
「近江国 大津の八町に 玉のごとくの火
飛行(ひぎやう)する事あり
土人云くむかし志賀の里に油をうるものあり
夜毎に大津辻の地蔵の油をぬすみけるが
その者死て魂魄炎となりて 今に迷ひの火となれるとぞ
しからば油をなむる赤子は此のものの再生せしにや」
昔、ある油売りがいた。
その油売りは、毎夜毎夜油を他人の蔵から盗み、それを売って生計を立てていた。
しかし死んだ後、迷える魂となり、油を舐める赤子として現れるようになった…。
油赤子は、彷徨える時は燃える火の玉となって飛来して現れる。
油を舐める時だけ、赤子となり姿を変え、また火の玉になってどこかへ去っていくという。
日本では、油は食用にも行灯用にも使われ大切な生活必需品であった。
油を粗末に扱うことへの戒めから生まれた、いわゆる「戒め妖怪」とも考えられている。
ところで、江戸時代に行灯という者は広まったわけだが、それに使用された油は菜種油だという。
ただ、庶民には安く手に入る魚油が広く使われ、さらに余裕のない庶民は油を買うお金もなく、日が暮れたら寝る、という生活をしていたそうだ。
油赤子が生前、盗みを働いてまで生計を立てていたことを考えると、きっと豊かな生活をしていた人物ではないだろう。
妖怪となってやっと、金持ちの家に出入りし、うまい油をやっとすすれたのだ。。
生前の行いのため、死してもなお油に囚われてしまった。
哀れな赤子は果たして今、LED輝く街の光の中で、まだ彷徨っているのだろうか。
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