top of page

罪と罰 油赤子


今でこそスーパーにもずらっと多種多様に並び、時には安値で買うこともできる油だが、昔は大変貴重なものであった。

「近江国 大津の八町に 玉のごとくの火

飛行(ひぎやう)する事あり

土人云くむかし志賀の里に油をうるものあり

夜毎に大津辻の地蔵の油をぬすみけるが

その者死て魂魄炎となりて 今に迷ひの火となれるとぞ

しからば油をなむる赤子は此のものの再生せしにや」

昔、ある油売りがいた。

その油売りは、毎夜毎夜油を他人の蔵から盗み、それを売って生計を立てていた。

しかし死んだ後、迷える魂となり、油を舐める赤子として現れるようになった…。

油赤子は、彷徨える時は燃える火の玉となって飛来して現れる。

油を舐める時だけ、赤子となり姿を変え、また火の玉になってどこかへ去っていくという。

日本では、油は食用にも行灯用にも使われ大切な生活必需品であった。

油を粗末に扱うことへの戒めから生まれた、いわゆる「戒め妖怪」とも考えられている。

ところで、江戸時代に行灯という者は広まったわけだが、それに使用された油は菜種油だという。

ただ、庶民には安く手に入る魚油が広く使われ、さらに余裕のない庶民は油を買うお金もなく、日が暮れたら寝る、という生活をしていたそうだ。

油赤子が生前、盗みを働いてまで生計を立てていたことを考えると、きっと豊かな生活をしていた人物ではないだろう。

妖怪となってやっと、金持ちの家に出入りし、うまい油をやっとすすれたのだ。。

生前の行いのため、死してもなお油に囚われてしまった。

哀れな赤子は果たして今、LED輝く街の光の中で、まだ彷徨っているのだろうか。

特集記事
後でもう一度お試しください
記事が公開されると、ここに表示されます。
最新記事
アーカイブ
タグから検索
まだタグはありません。
ソーシャルメディア
  • Facebook Basic Square
  • Twitter Basic Square
  • Google+ Basic Square
bottom of page