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かゞみの妖怪なり 雲外鏡


あらゆる魔物の正体を写すと言われる「照魔鏡」という鏡がある。

その長い年月を経た照魔鏡が付喪神となり、妖怪として命を得た姿が「雲外鏡」である。

殷の紂王を惑わした妖怪・妲己はこの照魔鏡に映されその正体を現したという。

「鏡に自分自身が写っている」と理解できる生き物は限られる。

(「自己鏡映像認知能力」と呼ぶそうだ)

この能力を持つ動物は、人間、チンパンジーなどの類人猿のほか、イルカ、ゾウ、シャチ…などがそうだという。

妖怪は狸や狐が化けたものもあるだろうが、彼らは鏡を認識できる動物ではないようだ。

妲己も九尾狐が化けた絶世の美女である。

鏡を認識することができないのであれば、照魔鏡にうつされた自分の本来の姿を見ても

自分の姿だと思わないのかもしれない。

もしかしたら彼らは化けることに夢中で、己の本当の姿を知らないのか。

雲外鏡がすいっと現れ、そこに映し出された自分の本来の姿を見て、

どれだけ絶世の美女で繕った九尾も、新たに恐ろしい化け物が出てきたと勘違いし、こりゃかなわんと退散したのかもしれない。

もしくはその時初めて己の姿を知り、

能力で過大に見えていた自分を、初めて元は小さき動物であったと認識したならば、

妖怪であっても愕然とし狼狽もするだろう。

はてさて人間も、虚飾も何もかも身ぐるみを剥がされ、丸裸で鏡に映った自分にまっすぐ向き合っていけるものだろうか。

小物がおろおろとうろたえるその姿を、雲外鏡はニヤリと鏡の中からのぞいているのだ。

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