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嫌われた神の姿 魃(ばつ)


山の奥に住み、いつとはなく山から下り現れる。

その姿は顔は人面で目は頭頂にある、体は獣で手足が1本ずつであるという。

妖怪というよりは、ビックフットなどの未確認生物のような、現実味を帯びない奇妙な生き物、といった印象だ。

魃が歩いた道の草木は枯れ、池の水も干上がるという。

干ばつ、飢饉の前兆として現れると言われ、魃の住む山にはその通り、雨が降ることはない。

魃は「ひでりがみ」とも言われる。

その昔、魃が妖怪となる前は、中国を統治した最初の帝、黄帝の娘だったという。

彼女の力は凄まじく、体内に大量の熱を蓄え、雨天であってもその熱を持って退け、天候を操るのだった。

黄帝が戦の際に娘である魃の力を利用したが、力を使いすぎた魃は天へ帰れなくなってしまったという。

戦に利用された魃の力ではあるが、その存在だけで干ばつをもたらし、被害を被るため、

黄帝は彼女を北方の山へ幽閉してしまう。

彼女が中原へ降りてくると、「神よ帰りたまえ」といい、追い返したという。

彼女の本来の名は「妭」と書き、美女という意味だったが、

忌み嫌われるようになり、部首の女を鬼に変えられた魃の名が用いられた。

大きすぎる力を持ってしまったために利用され、幽閉され、鬼と言われ、果てに獣の姿となってしまったのか。

魃は発見した時にうまく捕まえれば、濁り水や汚水、厠の中に投げ込むと悶死するので、被害を防ぐ事ができるというが…

哀れな女性の成れの果てと思うと、あまり酷なこともしたくはないという気持ちになる。

意のままに天候を操り続けた先人の欲が、一人の悲しい神を生み出した。

天候は女性のように気まぐれだ。

雨が降ることも、いつか当然ではなくなるのかもしれない、

その時に私たちは初めて、魃となった彼女の苦しみを思い知るのだろうか。

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