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それでも待っている 青女房(あおにょうぼう)
- magazine-yokai
- 2017年9月13日
- 読了時間: 2分

廃れた屋敷に一人、女が鏡に向かっている。
その顔は眉毛もぼうぼうに伸び、目尻は垂れ、だが常に鏡を持ってお歯黒や化粧をしている。
妖怪「青女房」。
”青女”とは、若い娘を表す言葉だという。
また、”女房”とは私室を与えられた高位の女官、貴人邸に仕える上級の侍女をさす言葉だった。
この女房は、身分によって「上臈(じょうろう)」「中臈(ちゅうろう)」「下臈(げろう)」に大別された。
侍女と聞くと、貴族に仕えた身の回りの雑用をこなす人たち、というイメージだが、「私室を与えられた」という通り、ただの小間使い・雑用、という印象よりは、良い暮らしぶりだったであろうことがうかがえる。
青女房は、常に誰かを待っている。
自分から行くのではなく、部屋を訪れてくれる誰かを待っているのだ。
叶わぬ恋に身を燃やしただけならば、妖怪になるにも、その人の元を訪れたり、探し彷徨う妖怪になっていたのではないか。
しかし、”部屋で待っている”ということは…
愛しの君は、いつぞやその部屋に来てくれたことがあるのだろう。。
一度だけか。幾度か、か。
哀れ青女房よ、忘れられないまま体も果てたというに、その人がもう来ることもないのに、ずっとずっとおめかしをして待っている。
願わくば、その人がもう一度姿を現して、もう大丈夫だよと、空へ連れて言ってあげてほしい。
ずっと寂しいはずなのだ。
青女房もきっと、ずっと昔に気づいているはずだ、愛しい人はもうこの世にいないことに。
そして廃れた御所で、もう誰一人その扉を開けてくれる人はいないのだということも。
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