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餌の思い出 鬼一口(おにひとくち)


やっと夢が叶ったと思ったのに、突然の不幸に見舞われて命を落としたり、怪我をしたり、

なんと神様は薄情で残酷なのだろうと思うことがある。

その矛先が決まるのに、大きな理由はないのだろう。

大きな理由はないからこそ、避ける方法もないのだ。。

ある男女が、身分の違いから、なかなか結ばれないでいた。

ある日、とうとう男が女を連れ出し、見つかり捕まらないよう、逃げ走った。しかし、途中で夜も更け、さらに雷雨に見舞われてしまったので、蔵を見つけて女をその中に入れて、男は外で蔵の前で見張りをしながら、夜明けを待った。

あくる朝、やっと夜が明け、蔵の中を見ると、女の姿が消えてしまっていた。

女はなんとその蔵に住んでいた鬼に一口で食い殺されてしまったのだ。

悲鳴も雷鳴に紛れてかき消されて、男には最期の声も聞こえなかったのだ。。

この無慈悲な鬼の名を「鬼一口」と呼ぶ。

どれだけ残された人の思いがあろうが、どう望もうが、

人が亡くなるときは、本当にあっけなく一瞬だ。

大寿を全うする死に際であればともかく、

天災や不慮の事故などで命を奪われたとき、その圧倒的な力の前に私たちは為す術もない。

鬼一口は、その感覚を「異界から鬼が現れて人間を奪い去っていく」と解釈するために生まれた妖怪と言われる。

せっかく結ばれた男女の純愛を守ってあげたい…!なんて思うのは人間の都合で、

私たちが魚の出生にいちいち思いを馳せないのと同じ、鬼にとっては人もただの餌でしかないのだ。

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