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水と死 赤舌(あかした)
- magazine-yokai
- 2017年9月19日
- 読了時間: 2分

水門の上に、大きな黒雲が立ち込め、その中に化け物の姿がある。
化け物の口は大きく開かれ、その口からは巨大な真っ赤な舌が現れている。
妖怪「赤舌」。
手には爪を持ち、しかし実体があるような無いような、境界の曖昧な妖怪だ。
この赤舌は水門に現れる。伝承が少なく、赤舌自身の意思や意図、その生態はわからないが、
水辺に現れ赤(=垢)い口を覗かせていることから、昔の人は水辺の不浄なものとして赤舌を恐れたのだと思われる。
また、赤舌は”赤口”という名前でも絵描かれている。
この赤口という名前は、六曜という(大安、仏滅、などが有名な)暦でも使われる言葉で、
陰陽道の「赤舌日」という凶日に由来する名前だという。
赤口に当たる日は、火の元、刃物に気をつけなければいけない日と言われる。
つまり、赤は「死」を連想させ、それに注意しなさいよ、という日ということだ。
生活の糧である貴重な水門に、不浄な汚れとともに死を携えた化け物がやってくる。。
水を大切にしなさい、ということなのか。
私たちが思い通りに水を飲むことなど、容易くは無いと思い知らせたいのか。
それとも昔水を奪い合った人間たちの果ての姿なのか。
今や蛇口をひねればいくらでも水道が出てくるが、この水をここまで引くのに、こんなに安全にお水が飲める今日までに、どれだけの人が苦しみ血と汗を流したのか。
人間がいつか奢り、怠け、水への感謝も忘れた日には、赤舌はむくむくとダムの水門のところから生まれ出で、水を真っ赤に染め上げて、人間を根絶やしにかかるのかもしれない。
その時初めて私たちは、水を絶たれるという恐怖を心から痛感するのだろうか。
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