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おーい 木霊


山に登った時、「おーい」と声をかけると、向こうから「おーい」と声が返ってくる。

いわゆる”山びこ”は、音が反射して返ってくるものと言われている。

しかし、時には自分の声と少し違う声で返ってくることも、あるという。

山びこは、妖怪の世界では木の精霊である「木霊」の仕業であるとも考えられている。

木霊は美しい山や森に住んでいて、自由にその中で駆け巡っているのだという。

木霊が宿る木は樹齢100年を超えるなどの大樹であり、そういった木は人間たちからも長年にわたり守られ、愛され、時には神木としてその土地を守っている。

そういった大樹は、切ろうとすると叫び声をあげたり、切れ目から血を出したりするという。

土地開発などで止むを得ず伐採してしまった大樹もあるだろうが、かわいそうに、痛かったろう。。

木霊がとる姿は様々だ。

火の玉となって現れたり、獣の姿を借りたり。

また、人の姿になり、人間に恋をした木霊が人の姿をして会いにいった…という逸話もあるという。

(絵には老人の姿となった木霊が描かれている。精霊というよりは、木の神様に近いと思える姿だ)

もしかしたら山道ですれ違った人や動物は、木霊の仮の姿だったかもしれない。

山で、向こうから返ってきた山びこが、自分の声とは違うように聞こえた時。

人間が叫んだ「おーい」に反応して、木霊たちが楽しくお返事をしてくれたのだろう。

人間が自然を謳うことは木霊たちにも嬉しいことなのだろうか。

それとも単なる気まぐれか。

山の中腹からざわざわと風が走る尾根を眺めていると、彼らが駆け巡っていく声が聞こえてきそうだ。

いや、木々が風にたなびくその音こそが、彼らの喜びの声なのかもしれないが。

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