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山に住む音 古杣(ふるそま)


ラップ音、という怪異がある。

家の誰もいない空間から、起こるはずもない破裂音や物を叩く音が鳴り続け、家主を悩ませるというものである。

ラップ音は、霊が”生前の行動を繰り返して”いるような音であるとも言われる。

ドアを開けるとか、壁やドアをノックする音、指を鳴らしたり歩いたりする音。

それが家の中ではなく、山林で起きるというお話。。

四国に伝わる怪音現象、「古杣(ふるそま)」。

誰もいないはずの夜中の山林から、「カーンカーン」と木を切っている音がする。

やがて、バリバリと音を立て、最後は「ドーン!」と木の倒れる音がするという。

こんな時間におかしいと思い、日が登った後に見にいくのだが、そこには木を切った跡も倒れた様子もないのだという。

時には木の音だけではなく、人の掛け声などが聞こえることもあるという。

古杣の”杣(そま)”とは、木を植え付け育て、材木をとる山または材木を取るために働いている人のこと、である。

つまりは、林業関係者の方々を指す昔からの呼び方だという。

この”杣”に従事した人々は、リーダーを置いて数十名前後で伐採地近くで共同生活を送りながら作業をしていた。

また、山に暮らし共に過ごす中で独自の文化を築く組織もあり、独自の祭祀を行うなどしていたため、

その頃、村などのいわゆる「平地」の人は、山に住む彼らを異色な人々と見て、恐れていたのだという。

仕事の特性上、異質なものと見られるようになってしまったのだ。

実はこの「杣」という呼び名も、「木こり」と並んで差別的な表現とされている。

古杣は彼らの生活そのものを再現しているようだ。

大木を扱う林業は容易い仕事ではない。

不慮の事故で命を落とすものも少なくなかった。

古杣は生前は差別を受け、無念にも年半ばで亡くなった彼らが今でもその山で働き、生き続けている少し悲しい音なのだ。

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