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空へ行くには 以津真天(いつまで)


流行り病は、いつの世も恐ろしいものだ。

ワクチンや有効な治療法が見つからないままに人々が生と死の境をさまよっている…その頭上では、見たこともない怪鳥が飛び回っているかもしれない。

妖怪・「以津真天(いつまで)」。

その昔、疫病が流行して多くの死者が出ていた頃、毎晩のように貴族の正殿の上空に大きな怪鳥が現れるようになった。

その怪鳥は「いつまでも、いつまでも」と鳴いて、人々を恐れさせていた。

公家にこの怪鳥の退治を任された弓の名手が見事射止め、その姿を見るに、顔面は人の顔、蛇のような体、クチバシは曲がり、ノコギリのような歯が並んだ、体長4メートル以上もある怪鳥であった。

以津真天は、疫病や戦などで死んだ死体を放置していると、その死体のそばに止まり「いつまでいつまで」と鳴くという。

また、そのように無念の死を遂げた人々の怨念が集まり妖怪と化したものが、以津真天となるのだとも言われる。

生前に痛みや熱で、苦しみながら死んでいったのだろう。

終わりの見えない、いつまで続くのかもわからない絶望と、朦朧とした意識の中で、早く苦しみから解放され、空へと上がりたかっただろうか。。

神様は羽を与えたが、すぐに極楽へは連れていってくれなかった。

無念の思いが上へ行くには、あとどれだけの時間と供養が必要だろうか。

そしてもう以津真天を生まないように私たちが努力するほか、きっとないのだろう。

数年後の空に、以津真天が飛び回る世界でないことを祈るばかりなのだ。

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