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誰への 送り拍子木(おくりひょうしぎ)
- magazine-yokai
- 2017年9月30日
- 読了時間: 1分

火の用心、カン、カンという、日本人では皆が知っている拍子。
地域の自警団や消防団が今でも行なっている見回り。
秋冬になり、そろそろ聞こえてくる季節だろう。
さて、これは「本所七不思議」の一つ、現代でいう東京都は墨田区に伝わる怪異である。。
江戸時代、墨田区の割下水(下水路のあったところ)付近を、「火の用心」と唱えながら夜回りをしていると、自分が鳴らしたはずの拍子木が同じ調子で繰り返して聞こえる。
はてと思い振り返るが、後ろには誰もいない。
しかし、拍子木はやはり自分の背後から、まるで自分を送っているかのように、自分の後に続いて響くのだった。
拍子木は、火の用心の他にも、様々な使われ方をされている。時には舞台などの出し物、時には祭事や神事、はたまた紙芝居や相撲など。
だからそれこそ珍しい音でも珍しいものでもないのだが、通ずるのは、「誰かに向けての合図」であることだ。観客に、神様に、火の用心の時はもちろんその声が聞こえる家々に。
誰に向けられてもいない拍子木は、不気味だ。
道端で突然、「はい!プレゼント!」という声がして振り返っても誰もいない。
でも向き直すと明らかに自分の背中に向かって「はい!プレゼント!」とまた声がする。
それと同じことと思うと、心底、ゾッとする怪異である。。
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