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一人の灯 老人火(ろうじんび)
- magazine-yokai
- 2017年10月8日
- 読了時間: 1分

雨の夜。山奥に一つの焚き火が見える。
これは助かった、と思うだろうか?
いや違う。
天候は雨だ。屋外で焚き火ができるはずもない。。
それは信州と遠州(現在の長野県と静岡県)の境に現れる怪火である。この火は老人と共に現れ、その炎は水をかけても消えない。唯一、獣の皮ではたくと消えるという。
この火に行き当たってしまうと、慌てて逃げようとしても、どこまでもついてくる。
履物を頭の上に乗せれば、火は脇道に逸れていくという。
この老人火、別名を天狗の御燈(てんぐのみあかし)ともいい、天狗が灯す鬼火であるとも言われる。
天狗は魚も鳥も食べるが、獣の肉はその臭さを嫌い、食さないと言われている。
この老人火が獣の皮で消えること。
また道中で不浄のものを踏みしめてきたであろう履物を避けること…。
炎の傍にいる老人は年老いた天狗の姿なのだろうか。
執拗に人を追いかける炎は、人恋しいのか取って喰らおうとしているのか。
雨の夜にひっそりと灯る炎は、その闇に孤独を照らしているようにも思うのだ。
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