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誰がために鐘は鳴る 野寺坊(のでらぼう)
- magazine-yokai
- 2017年10月13日
- 読了時間: 2分

全国に7万件以上もあるお寺。
お寺と一口といっても、大きいものから小さいものまで、
それこそ数多くのお坊さんが暮らすお寺もあれば、小さくて管理もなかなか行き届かないようなお寺もあるだろう。
お寺が廃れる理由はいくつかあったとて、きっと”身から出た錆”という言葉通り、お坊さん自らの行いによって、経営悪化に追い込まれてしまったお寺もあるのだ。
貧相な足が見えてしまっている。
「野寺坊(のでらぼう)」は、ボロボロの袈裟を着て、お寺の鐘のそばに立っている。
荒れ果てた廃寺に現れるという妖怪だ。
お布施がもらえず、廃寺となった住職の恨みが妖怪となり、
誰もいなくなったその寺で一人、野寺坊は鐘を鳴らすのだ。
人気のない山の中。
誰もいないはずの廃寺から鐘の音が聞こえてきたら、それは野寺坊が鳴らしているのかも知れない。
野寺坊は”破戒僧”と呼ばれたお坊さんの成れの果てであるともいう。
「破戒」とは、その宗教における戒律を破ることだ。
いわゆる、殺生、肉食、姦淫、などだろうか。
悟りを得る過程にいるはずの僧侶が、欲求に負けてしまったのだ。
それが周辺地域にも知れてしまったのだろう。
人々が付いてきてくれるはずもない。
とうとう訪れる者も、お布施をくれる者もいなくなり、荒れたお寺で一人鐘を鳴らし、じっと何かを待っているのだ。
今彼は、反省しているのだろうか。
それとも後悔しているのだろうか。
その手足はすでに人間のものではなく獣に近づいているが、
なんとなくだが、早く鐘を鳴らし終えて、獣になる日を待ちわびているようにも見えるのは、考えすぎだろうかな。
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