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魔の訪問 通り悪魔(とおりあくま)


「暇」は人を食らう。

忙しく体を動かしている時間から解放されてやっと余裕ができた途端、気が抜けてしまい、頭が思ったように働かなくなったり、

それまでさして気にも留めなかった細かいことが気になったり、イライラしたりする。

ぽっかりと日々の隙間に入り込んだ「暇」によって、張り詰めた糸が切れるように、心身ともに不安定になるものだ。

「通り悪魔」と呼ばれたその妖怪は、現在もあらゆる人のそばにいる。

気持ちがぼんやりしている人間に取り憑き、心を乱すといわれている。

道で突然理由もなく人を襲う”通り魔”は、この通り悪魔に取り憑かれることで起きると思われていた。

この恐ろしい通り悪魔だが、「心を落ち着ける」ことで打ち勝てるという。

ある武士が自宅で庭を眺めていたところ、茂みの中から炎が燃え上がっていた。

不思議に思ったが気を鎮めてみると、塀から白い襦袢を着た男が髪を振り乱し、槍を振りかざして現れたという。

改めて気を鎮めてみると、その男の姿は消え、炎も消えていたという。

しかししばらく後、隣の家で主人が乱心し、暴れ始めた。

通り悪魔は、隣の家に移動したのだった。

心の隙間につい通り悪魔が入り込んできても、この武士のように水際で心を整えて、”思い直す”ことが人間はできるのだ。

(にしても、炎に慌てなかったのはすごい)

通り悪魔は家から家を無差別に渡り歩いている。

毎日忙しく過ごしている皆さんが、ふと空いた日々の余白に彼と出会わない事を祈るばかりだ。

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