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守らねばならぬもの 方車輪(かたわぐるま)


炎に包まれた片輪の牛車に、美しい美女が乗っている。

町中を夜な夜な徘徊し、ぼうぼうと燃える炎に

その姿を見たもの、だけでなく噂話をしたものさえも祟られるという、妖怪・方車輪(かたわぐるま)。

その昔京都のある時期に毎晩のように方車輪が現れており、人々が外出を控えていた。

しかし興味本位である女性が覗いてしまうと、方車輪に乗っている女性がおり、

「我を見るより子供を見よ」という。

女性が慌てて探したが、家の中にいたはずの子供はいなくなってしまっていたという。

女性は子供を失くした悲しみを嘆き玄関戸に句を詠んだ。

それを見た方車輪が心を打たれ、子を返してくれる。

しかし姿を見られた方車輪は同じ場所にいられないのだ、といい、別の町へ姿を消してしまったのだという。

方車輪は、人間に心を重ねる優しさも持っていたのだ。

しかし、妖怪ゆえの姿を見られてはタダで済ませることもできない、という規則。

優しいものに触れた折、どこかの町へ行かなければならない、辛さ。

守らねばならぬルールの中で、

妖怪ゆえの生きづらさがありありと現れる、方車輪である。

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