

浮き草の女心 女郎蜘蛛(じょろうぐも)
夏から秋にかけて庭先に巣をはり、大きくて細長い脚を持つ、黄色と黒の縞模様がくっきりと美しい体を持つ女郎蜘蛛。 雨上がりの露を浴びた巣の網目は、その繊細な編み込みが光に反射してキラキラと輝いている。。 そんな実在の蜘蛛の名前をそのまま背負った妖怪、「女郎蜘蛛」(当て字で”絡新...


責め苦を受け続ける神様 閻魔
この世の法にも限界がある。 なぜそれが無罪なのか、罪に問われないのか、 罪に対して軽すぎるじゃないか、明らかに傷つき泣いている人がいるのに、どこかでうまく逃げ笑っている人間がいる…。 この世は、地獄を願わずにはいられない。...


走り続ける無念 輪入道
牛車の車輪の中央に、男の首がついている。 車輪はぼうぼうと燃え、街道を「おのれ…おのれ…」と言いながら走り回る。 この姿を見てしまったものは魂を抜かれてしまうという。 その妖怪の名前は「輪入道」。 輪入道は、夕暮れ時、街から山へすごい勢いで駆け上っていくそうだ。...


待てない鳥 陰摩羅鬼(おんもらき)
その姿は鶴に似て、体は黒く、羽を震わせて甲高く鳴く。 この世に存在しない怪鳥、「陰摩羅鬼」。 陰摩羅鬼は、新しい死体が十分な供養を受けず、化けて出たものとされる。 経文読みを怠っている僧侶のもとに現れるといわれている。 ある男が寺でうたた寝をしていると、自分を呼ぶ声で目を覚...


運命共同体 足長手長
手の長い「手長人」! 足の長い「足長人」! 二人合わせて、足長手長!! というわけで、「どうもこうも」に相対して息のぴったり合った、名コンビ妖怪「足長手長」の登場である。 足長人は「足長国」の住民、手長人は「手長国」の住民であるそうだ。...


やおよろずの広報大使 唐傘小僧
一つ目で大きな舌を出し、一本足でぴょんぴょんと跳ねて現れる。 悪さはしないし、なんといってもその愛嬌が可愛らしい、唐傘小僧くんである。 その正体は、その通り”傘”である。 つくも神(付喪神、九十九神)といい、傘に限らず、物が長い歳月を経ると、魂を得ると言われている。...


地続きの穴 丑の刻参り
人を呪わば穴二つ…とはよく聞く言葉だ。 簡単にいうと、誰かを呪うならば、あなたにも呪いがかえってきますよ、ということだ。 もっと大きく解釈すると、誰かを憎み呪った時点であなたの足元にも穴が生まれ、それに足を取られて大事な時間をなくしているのですよ、とも言われる。...


驕りと勘違い 襟立衣(えりたてごろも)
「鞍馬山僧正坊」と呼ばれる天狗がいる。 牛若丸に剣技を教えたとされる、日本八大天狗の1人である。 彼はかつて人間の高僧だった。 しかし修行途中にもかかわらず、悟りを得たと思い違えたため、死後に成仏することができなかった。そして彼はその早合点から、驕りの象徴である天狗に生まれ...


満たされぬ強欲 餓鬼
足るを知る者は富み、強めて行う者は志有り。(老子) もっといい食事を、もっといい恋人を、もっといい人生を。 飽食の時代とはいうものの空前絶後の大不景気、SNSではどこもかしこも自己アピールとうねるような羨望の眼差し。横を見ればきりがないがやっぱり自己の現状にも満足できず、足...


人が人を呪う顔 朧車(おぼろぐるま)
「むかし 賀茂の大路をおぼろ夜に 車のきしる音しけり 出てみれば異形のもの也 車争の遺恨にや。」 月が雲に翳りはっきりと見えない”おぼろ夜”に、 きいきいと牛車のきしむ音がする。 出て見てみると妖怪がそこにいた。 車争いによる遺恨から生まれ出た妖怪であろうか。...