

孤独な食事 狐者異(こわい)
食欲は人を狂わせる。 「狐者異(こわい)」は、生前に他人の食べ物まで食べてしまうような者が、死後になってもその執着心を引きずって妖怪となってしまった姿であるという。 死してもなお、人ではない姿になってもなお、食べ物を求め続ける浅ましさ。...


机上の鬼 文車妖妃(ふぐるまようひ)
夜な夜な積もるあなたへの想い文、 その熱は燃え上がりこの身を焦がし、いつしか私は、あなたの元へ黒煙となり届くだろう。。 文車とは、貴族の邸宅にあった荷物を載せる屋根付きの車のようなもので、火事などの非常事態に備えて家に置いていた、 つまりはちょっと立派な手押車である。...


幻が生む幻 蜃(しん)
蜃気楼 ー熱気・冷気による光の異常な屈折のため、空中や地平線近くに遠方の風物などが見える現象。 いいや、妖怪の世界では違うのです。 蜃気楼を生み出し ていたものは、大きなハマグリだったのだ。 大ハマグリが、春や夏に海中から”気”を吐いて楼閣(高く立派な建物)を作り出す。...


どうか笑顔で 小豆洗い
「小豆洗おか、人取って喰おか…」 川のせせらぎとともに、シャキシャキ、ショキショキと音が聞こえてきたら、すぐにその場を離れることだ。 加えてこの歌声が聞こえてきたら、それに気を取られているうちに川べりに誘導され、川の中へ落とされてしまうという。...


小鬼は何処に 家鳴(やなり)
古今東西、日本だけでなく全世界で代表的な超常現象である、いわゆる”ラップ音”。 その原因は、小さい鬼が屋敷の柱をゆすり、ギシギシと音を立てていたのである。 この現象を「家鳴」と呼ぶ。 木造家屋にお住いの方は家鳴は慣れっこかもしれないが、...


尻尾が見えてますよ 見越入道
別名、「見上げ入道」ともいう。 夜道に歩いていると、お坊さんの姿で突然現れる。 おや、と思い見上げると、先ほどより背が大きく見える。やや、とさらに見上げると、またさらに大きくなる。 見上げれば見上げるほど、大きくなるのが「見越入道」だ。...


背後に 震々(ぶるぶる)
ねえ、あなたの後ろに誰かいるよ…。 その人、だあれ? … 今、ちょっとでもぞくっとした方、いますでしょうか。 怖い話を聞いた時、真っ暗闇を歩く時、日常さまざまな場面でなんだか怖いな、やだな~怖いな~、と感じる瞬間は誰にでもあるだろう。...


足早なゆるキャラ ぬっぺふほふ
のっぺらぼうの仲間であると言われる、ぬっぺふほふ。 ぬっぺふほふ。 ぬっぺふほふ。 良い語感だ。。 やわらか~いのだろうな。。 名前だけで硬くはないと分かる、しわっしわの肉の塊、ぬっぺふほふ。 目も鼻も正確には判別できない。肉がたるんだような様相で、皺だらけで短い手足が生え...


骨の髄まで 手の目
野原を歩いていると、目の前に一人の盲人が現れる。 見ると盲人の手のひらには目があり、その目でギョロギョロと何かを探しているようである。慌てて逃げ帰り聞くことには、そのあたりで数日前に野党に襲われ座頭が犠牲になった、という。。...


浮き草の女心 女郎蜘蛛(じょろうぐも)
夏から秋にかけて庭先に巣をはり、大きくて細長い脚を持つ、黄色と黒の縞模様がくっきりと美しい体を持つ女郎蜘蛛。 雨上がりの露を浴びた巣の網目は、その繊細な編み込みが光に反射してキラキラと輝いている。。 そんな実在の蜘蛛の名前をそのまま背負った妖怪、「女郎蜘蛛」(当て字で”絡新...