

紡ぐ御婦人 苧うに(おうに)
苧(お)。麻やカラムシと呼ばれ、植物の茎の繊維を編み込んだものをいう。 「糸を紡ぐように」という表現があるが、近所に糸が売っているわけでもなかった時代、 女性たちは裁縫用の糸一つ一つを作り、丁寧に編み込みんでいたのだ。 さて、いつものように女たちが集まり、麻で苧を編んでいた...


あの世からの火 けち火(けちび)
人魂、火の玉、鬼火…。 いわゆる「怪火」は様々な場所に現れ、姿を変えて現れる。 その伝承や地方によって、呼び方も様々変わるようだ。 西日本では、「けち火」。 高知県の民話に、このような話がある。 芳やんという男が夜道を歩いていると、川のそばで道端にけち火が転がっていた。...


寝ぼけまなこの 暮露暮露団(ぼろぼろとん)
万年床、という言葉があるが。 敷きっぱなしの布団というのは、果たして大切にされているのか、ぞんざいに扱われているのか、難しいところである。 また、客人用に長らく押入れへ閉じ込められている布団も、出番が来ぬままいく年月重ねてしまうこともあるだろう。...


ちくり屋 しょうけら
”庚申”という干支の日に神仏を祀って徹夜をする行事を庚申待(こうしんまち)という。 この日は、眠らずに過ごさなければいけない。。 平安時代頃から江戸時代にかけて広まった風習だ。 人間の体内に三尸(さんし)という虫がおり、この虫が庚申の夜に体から抜けて天へ昇る。天帝にその人の...


雪に願いを 雪女
色づいた木々から溢れる木漏れ日も、 瞬く間に寒さに飲み込まれそうな。。冬の気配を帯びた風が吹いております。 この寒さと一緒に、近くの山には美しくも恐ろしい妖怪が降り立っている、かも、しれない。。 妖怪「雪女」。 悲恋の物語で有名な彼女。...


確かな毒牙 七歩蛇(しちほだ)
決して大きく恐ろしいものだけが妖怪ではないのだ。 小さく小さく、わらわらと湧いて出る妖怪。 それもまた奇なる人外のものたちの饗宴ってやつだ。 妖怪・七歩蛇(しちほだ) 体長12センチメートルほどの小さい蛇で、4本の足を持つ。...


その風の行き先 精霊風(しょうろうかぜ)
縁起でもないものを嫌い、塩を撒き、 暗い場所には近づかない。 「あっちへ行け」「しみったれた顔してんじゃないよ」 と、多少乱暴であっても、昔の人ははっきりと「陰気なもの」は忌むべきものとして扱い、生きていた。 今や陰も陽も渾然一体となり、道中のどこかに隠れ潜む邪気に当たらぬ...


悲しきモンスター 経凛々(きょうりんりん)
言葉に魂が宿る「言霊」と同じように、 ありがたいお経にも魂が宿る。 はたまたそれを記した経文自体も命を宿すことがあるのだろうか。 経文の妖怪、「経凛々(きょうりんりん)」 「尊ふとき経文のかゝるありさまは、 呪詛諸毒薬のかえつてその人に帰せし...


子の重さ 産女(うぶめ)
母親となる女性は、十月十日、我が子を無事に生み、その腕に抱くためにその日々を過ごす。 この世界のいたるところで起きていることだというのに、その凄まじさは、一人一人の体験を聞くと想像を超えるような大変な日々を過ごされている。...


ふっ 火消婆(ひけしばば)
夜に白熱灯の明かりは心地よい。 先祖は長らく夜を昔ろうそくで過ごしたのだから、きっとその名残だろうか。 そんな私たちに丁度いい明かりも、闇夜に隠れ人外に暮らす妖怪たちにとっては、眩しすぎるものでもあるのだろう。 宴会の会場、提灯など、誰もいないのに灯していたろうそくが突然消...