

不完全変態 百々爺(ももんじい)
「原野夜ふけてゆきゝたえ きりとぢ風すごきとき 老夫と化して出て遊ぶ 行旅の人これに遭へばかならず病むといへり」 原野に現れる老人の妖怪「百々爺(ももんじい)」。 出会ってしまうと、必ず病気になってしまう。 百々爺(ももんじい)は、「モモンガ」や「野衾」という妖怪の異称でも...


学び忘れ繰り返す 禍(か、わざわい)
君子危うきに近寄らず。 教養があるものは自ら危険な物事には近づかない、という言葉だ。 しかしその学びの礎となるには、過去の失敗を知らなければいけない。 どんな学びも一番初めに、大きな失敗を経験した人がいる。 その昔、争いも災厄もない平和で豊かな国の王がいた。...


雨に踊れば 雨降小僧(あめふりこぞう)
冷たい雨とともに一気に寒気が訪れ、冬の支度が急がれる。 夏の余韻は既になくなり、あっという間に秋模様と言った最近ですが。 「雨のかみを雨師(うし)といふ 雨ふり小僧といへるものは めしつかはるる侍童(じどう)にや」 雨の神様に仕える子供の妖怪、「雨降小僧」(あめふりこぞう)...


魔の訪問 通り悪魔(とおりあくま)
「暇」は人を食らう。 忙しく体を動かしている時間から解放されてやっと余裕ができた途端、気が抜けてしまい、頭が思ったように働かなくなったり、 それまでさして気にも留めなかった細かいことが気になったり、イライラしたりする。 ぽっかりと日々の隙間に入り込んだ「暇」によって、張り詰...


誰がために鐘は鳴る 野寺坊(のでらぼう)
全国に7万件以上もあるお寺。 お寺と一口といっても、大きいものから小さいものまで、 それこそ数多くのお坊さんが暮らすお寺もあれば、小さくて管理もなかなか行き届かないようなお寺もあるだろう。 お寺が廃れる理由はいくつかあったとて、きっと”身から出た錆”という言葉通り、お坊さん...


火傷では済まない 飛縁魔(ひのえんま)
♪丙午(ひのえうま)のおふくろは 今年で60歳 親父を参らせた昔の美少女は すごく太って元気がいいが… 高田渡の歌「系図」に、こんな一節がある。 丙午生まれの女性は昔から、「気性が荒く、男を食いつぶして早死にさせる」と言われていた。...


鬼が宿り続ける 髪鬼(かみおに)
女性の執着や怨念は、様々なものに宿る。 例えば、持ち主がじっと見つめることが多い”手鏡”の類、それと髪をとく”櫛”は、リサイクルショップや古物商などで安くても、買うことは遠慮した方が良いという。 もちろん、その噂に科学的根拠はない。...


どでかい架け橋 手洗鬼(てあらいおに)
山から山をまたぐ橋。 山の頂から空高く弧を描く虹。 山にかかるものは、自然が生んだものであれ人が生み出したものであれ、いつでも美しく壮大で、見るものを魅了する。 四国にかかる瀬戸大橋、その距離をはるかに超えて高く山と山を繋ぐそれが、まさか「鬼の足」だったら、一体どんな景色が...


神様の気遣い 白粉婆(おしろいばばあ)
白粉婆(おしろいばばあ)は、奈良県に伝わる妖怪だ。 その姿はひどく腰が曲がり、ボロボロな大きな傘をかぶって歩いている老婆の姿だ。杖をつき、徳利を持っている。 鏡を引きずり、ジャラジャラと音を立てて姿を表すという。 その顔一面に白粉を塗りたくっているのだが、その塗り方がひどく...


一人の灯 老人火(ろうじんび)
雨の夜。山奥に一つの焚き火が見える。 これは助かった、と思うだろうか? いや違う。 天候は雨だ。屋外で焚き火ができるはずもない。。 それは信州と遠州(現在の長野県と静岡県)の境に現れる怪火である。この火は老人と共に現れ、その炎は水をかけても消えない。唯一、獣の皮ではたくと消...